暗室は垂直をめざす思考と、左右に揺れる運動の交点に立つ。
• ヴァルールの秩序とその崩壊を見据える
• フィルム面に遺留している「事件」の痕跡と向き合う
• 徐々に消滅して行くフォルムの名証性を見つめる
• 存在と非在の境界を決する〈しきい値〉を読み取る
何が写されていようとも、結果としての「世界」の出現こそが求めるモノの大前提である。
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時間の溝、ズレはネガの中に埋め込まれている。
その後、暗室でその「時間」はネガから掘り出される。
現実の時空から捕獲されたイメージが、過去完了継続時間を経て蘇る「イメージ考古学」の時間。

Salon de Vert Press 「多肉植物園」より

ネガを読む、アトモスフェールを読む。
曲解は許されるが、
十全なる凡庸は看過される。
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イメージは言葉に同定できえない。
私にとって写真とは、
辞書にない言葉をまさぐる装置。
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イメージが物質に還る時、さらさらと崩れ落ちる粒子は、
かつてイメージと呼ばれていたものだ。
だが、役目をおえて白い粒状の粉末になりフィルム面から滑落する。
あのイメージの伽藍は、いったいどこにいってしまったのだろう。

Salon de Vert Press 「漂える森へ」より